東京の西側、国分寺の小さなアパートで、


こっそり作っている陶器のボタン。


その紹介ページになります。





陶器のボタンです。

お茶碗やお風呂のタイルと同じ焼き物です。


1つずつ手作りで作っています。

簡単にですが、作っていく工程をお見せします。


まずは、事前に作っておいた石膏で型に、

お団子状にした粘土を、押し込んでいきます。

パカっと型を外すと、綺麗な形になっています。



たい焼きのはみ出た部分みたいに羽がつきますので、

それを丁寧に切り取り、目打ちでボタン穴を作ります。



この後、一度焼いた後、釉薬(※1)を塗って、もう一度焼けば完成です。



※1 土をコーティングする色がついたガラス質のもの。


このような作り方なので、個体によって少し形が違ったり、

釉薬の濃淡の具合が異なったりします。


規格の同じものをお探しの方には、

申し訳ありませんがお力になれそうもありません。


むしろ個々の微妙なニュアンスの違いを、

ひとつの出会いとして楽しんで頂ければ幸いです。





最初は3つの型から始めたボタンの制作ですが、

種類が徐々に増えていって今は12種類になりました。






たくさんの種類のボタンがあったほうが、

お目当てのボタンを探す楽しみは増えていくものだと思っています。


今後も、年に2回、新作のボタンシリーズをお披露目したいなと思っています。

(「ボタンの春夏コレクション2014」みたいな感じで)


大きさは、既に売られているボタンのサイズを調べ、

数の多かった、15mm,20mm,25mmを基準にしています。


厚さは、普通のボタンに比べて少し、厚ぼったい感じです。

タイトな穴には入らないかも知れません。




まずは、オーソドックスな使い方。

もっている服のボタンを取り替えるという方法です。



この服は、とある量販店で買ってきた5千円以下のセーターです。


プラスチック製のボタンを付け替えただけで、

服の印象をがらっと変わったように思えます。


穴のサイズは、ちょうどぴったりで、すぐに取り替えることが出来たようです。


ボタンは服の顔のようなもの。

着古した服も、ボタンを付け替えるだけで見違えるかも知れません。

もしよければお試しください。




今までに何人かの方にボタンを使って頂きましたが、

その使い方は人の数だけあるのではと思うほどです。


一部だけご紹介致します。


帽子デザイナーの方が作られた花のブローチ。



帯留めの材料として購入する方もいらっしゃいました。



魔除け効果があるという石で人形を作られたそうです。

ご丁寧に石の効果の解説も頂きました。




まさかボタンだけでここまで広がるとは思っていませんでした。

皆様から頂いたヒントを元に、

私自身、ボタンを使った作品を作るようになりました。


例えば、ヘアゴム。




例えば、ボタンのマグネット。



糸は、飾りです。

どの色の糸を合わせようかと思いを巡らすのは楽しいことでした。



まだまだあります。


マグカップにつけてみたり…



マカロンみたいなストラップを作ってみたり…



謎の人形を作ってみました。

名前は「ぼーたん」友人の娘さん(6歳)が名付け親です。




ボタンそのもののデザインも考え続けますが、

そのボタンをどのように使うのか、

それを考えるのも本当に楽しいことです。


皆様も、ボタンの新しい使い方、考えてみませんか?





陶器のボタンというと、その強度がご心配になることでしょう。


工業製品のような耐久テストはやったことはないのですが、

かなり頑丈なのではないかと思っています。

落としたとしてもまず割れません。


洗うときは、ネットに入れて貰えば大丈夫。

一度、間違ってそのまま洗ってしまったことがありましたが、

問題ありませんでした。


焼成の温度も1260度から1280度と(※2)、

陶器の焼成温度の中でも結構高めに設定しています。


温度が高ければ、粘土は石のようになり、それと変わらない強度を持ち始めます。

※2 本焼き。釉薬が反応する温度帯で調整するため多少のバラつきがある。




耐水性についてもお話をしておきます。


粘土を顕微鏡などで見ると、スポンジのように空洞が無数にあいていて、

その空洞を水が移動します。


温度を低めに焼く(※3)と、この空洞が残ったままになります。

園芸鉢はこのこの性質を利用して、水が抜けるようになっています。

※3 素焼き。800度前後で焼きあげる。このとき釉薬はかけない。



粒子と粒子の隙間。高温で焼きあげると、土自体が溶岩のように溶けてきて、

この隙間を埋めてしまうんです。

ですので、水が染み込まなくなります。



粘土は、岩石が水の力で、途方も無い時間で砕かれ、細分化されたものです。

その粘土を窯の中で、元の岩石に戻すということになります。

この工程は、まるで地球の営みに触れているような気がして、大変興奮します。




国分寺の自宅で作っています。

こんな部屋です。

小さなアパートの一室ですが色々と工夫しながら住んでいます。




部屋の隅っこにある小さな電気窯で焼いています。

窯が稼働中でないときは、洗濯物カゴが乗っています。



作業のときは、ちゃぶ台を出して、もくもくと作ります。



頻繁に3匹の野良猫がやってきます。

作業中も膝の上に乗ってくる可愛いネコですが、

たまに、座る場所がなくて困ってしまいます。



国分寺が好きで、わざわざ引っ越してきました。

ですので、ちょっとだけ街の紹介もさせてください。


国分寺は、自然が多めの、のんびりした住宅型の街です。


昔ながらの農家もまだまだ残っていて

街のいたるところに無人の野菜販売所があったり、

坂道から滲み出る湧き水エリアがあったり、

ホタルがでる(らしい)小川があったり、

と散歩をするなら最高の場所です。





こんな場所に住みながら、規模は小さくても、

自分のペースで制作を続けていきたいと思っています。





申し遅れましたが、私、濱田と申します。


もともとはゲーム業界の企画職として働いていましたが、

2014年の2月に会社を辞め、

それ以来、自分で仕事を作っていく働きかたに挑戦しています。



陶芸との出会いは、15歳のころ。

高校生のときからロクロを回し始めます。


その後、大学、社会人と、陶芸とは別のことを主にすることになりますが、

常に陶芸は、自分を形作る大切なものとして心の中にありました。


自宅に窯やロクロを購入していたのも、

その引っ掛かりがそうさせていたのだと思います。


仕事を作っていかなくてはいけない今、

なんとか陶芸を1つの生活の手段として成り立たせる手段はないかと考えていました。


では、なぜボタンなのか。


正直な話をさせてもらうと、

ボタンをそもそも作ろうと思ったのではありません。

まずは、制約がありました。


制約その1は「場所」の問題です。


アパートの一室で作った場合、一番こまるのは、作ったものの置き場所です。

特に場所をとるのはマグカップで、とってがあるので重ねることすら出来ません。

ですので、保管に手間のかからない小さいものということになってきます。


制約その2は「差別化」の問題です。


お茶碗や湯飲みなどは、

益子や瀬戸などの陶芸の産地で日夜、陶芸一筋の職人が、

よい質のものを大量に作っています。


そんな市場に商品を出しても勝ち目がありません。

少しでも競争する人が少ない分野を見つける必要があります。


このような制約から、

小さくて、単価も高くて、

やっている人も比較的少ないボタンを、ひとまず作ってみました。





今見ると、だいぶ荒いですが、

このボタンを奥さんがセーターのボタンにしてくれたんです。


そのとたん、あんまり愛着のなかったセーターが、

急に大切なもののように見えてきて、

そのボタンの影響力の強さにビックリしてしまいました。



また、こんなことにも気が付きました。

ボタンを作れば、服飾関係の人とコラボレーションできるぞっ…と。


きっとジャンルが異なる人と一緒にものを作るのが好きなのだと思います。


今までの自分の制作を振り返ってみても、

誰かとコラボレーションで作品を作ってきた事のほうが多いです。


前職のゲーム作りは、

デザイナーさんとプログラマーさん、サウンドさんという、

全く異なるバックグラウンドを持つ人と協力しながら作っていました。


このボタンを通して、

多くの方と出会えるきっかけになるような気がしてなりません。

一緒にボタンのデザインも考えていけたら嬉しいです。





鬼子母神の手創り市などに出展をしています。

ペースは月に1度くらいです。

お店の様子はこんなかんじです。



国分寺駅の南口にある、

イノウエコーヒーエンジニアリングさんにも

置かせて頂いています。

店長のイノウエさんに、大きさや色などを伝えてくれれば、

1週間程度で制作して、お店に置いておきます。


ボタンの価格は、200円から400円。

市販の量産ボタンに比べてもお手頃の価格でないかと思っています。



以上で、おしまいです。

ここまで読んで頂きありがとうございました。


濱田